夜回り先生 水谷 修
公式ブログ

Osamu Mizutani Official BLOG

子どもたちへ No.10

 今、日本の多くの子どもたちが、「生きる力」を失っています。うつろな目で夜の町をさまよう子どもたち、暗い部屋で哀しい目でメールを打ち続ける子どもたち、明日を見失い自らを傷つける子どもたち・・・。私の元には、彼らからたくさんの相談が来ます。子どもたち、君たちはどうですか。

 

 そうだ、子どもたち、まず試してみましょう。すぐに外に出て、何か美しいものを自然の中に探してごらんなさい。月でも星でも、花でも木々でもいいんです。そして見つけたら、「○○さん、きれいだよ。ありがとう」と大きな声で叫んでごらんなさい。そして、すぐに家に戻り、お母さんにでもお父さんにでもいいです。何かひどいことをされたことや、哀しかったことを思い出して、「あの時の○○はひどいよ。怒ってる」と大きな声で怒鳴ってごらんなさい。どうですか、できましたか。これができた子は、安心です。十分に「生きる力」があります。

 

   そんなこと、ばからしくてできないという子も大丈夫です。ばからしいと思うこと自体が、きちんとした「生きる力」です。ちょっと哀しいですが。もしも、「どうしよう」と悩んでしまったら、あるいは、そんなことできないとしゃがみ込んでしまったら、それは、「生きる力」をだいぶ失っています。

 

 子どもたち、「生きる力」というのは、自分の中にある哀しみやつらさ、怒りや喜びをその都度、きちんと出すことで、ついていきます。ただし、感情的に暴れたり、叫んだり、取り乱したりではなく、きちんとことばで伝えることが大切です。君たちは、できていますか。哀しみやつらさ、怒りは、自分のこころの中に抱え込んでしまうと、大きなストレスになってしまいます。そして、君たちから「生きる力」を奪っていきます。

 

 子どもたち、君たちの中には、こころの中の想いを正直に出したら、友だちにきっと嫌われる、両親からも嫌がられると考えて、すべてを自分の中に抱え込んでしまう人も多いと思います。君たちのこころは、風船のようなものです。風船に空気をいっぱいためすぎたらどうなりますか。パンクしてしまいます。そして、今日本中で多くの子どもたちが、想いをこころにためこみすぎて、苦しんでいます。

 

 子どもたち、想いを出しましょう。最初は親や先生、友だちに対して直接出さなくてもいいです。空や雲、月や星、花や木々にでいいんです。小さな声ででもいいんです。哀しいときは、哀しみを、うれしいときは喜びを、きちんとことばにし話してみませんか。最後には、君の周りの多くの人に。これが、君たちの明日を生きる力になります。

子どもたちへ No.9

先日、私の元に一通のメールが届きました。「夜回り先生、先生の本を読みました。泣きました。先生、ごめんなさい。この本は、万引きしたものです。自分を責めています。苦しいです」哀しいメールでした。

 

   私はすぐに、「水谷です。本屋さんに謝りに行きなさい。水谷から言われたといって。そして、そこから私に電話をしなさい。私が、そのお金は払います。まずは謝ろう」そうメールを打ちました。返事はありませんでした。

 

 今日、彼女からの電話がありました。彼女は、私からのメールを見て悩んだそうです。彼女は、愛知県の有名な私立の進学校の生徒でした。もし、本屋さんに謝りに行って、そして警察に訴えられたら、退学になる。もし親を呼ばれたら、厳しい親なので捨てられる。友だちに知られたら、恥ずかしくてもう生きていけない。悪いことばかりが頭に浮かび、そしてどうして良いかわからなくなったそうです。そのたびに、私の本を何度も読み返したそうです。「先生、本の中に書いてある先生が亡くした子どもたちが、私を責めるんです。目をつぶると、責めるんです。逃げちゃだめって・・・。逃げたら、一生この罪を背負わなきゃならないって・・・。

 

   私、今日学校帰りにお金と本をもって、本屋さんに行きました。そして、店員の人にすべて話しました。そしたら、店員さん、私のこと叱らずに、「ありがとう。よく来てくれたね。うれしいよ」って言って、お金を払わせてくれました。「これで、もう万引きではないよ。君の本だよ。そうだ、君にこの本をプレゼントしよう」そう言って、先生の別な本をくれました。私、泣きました。うれしくっていっぱい泣きました。先生、行ってよかった。ありがとう、先生」うれしかったです。

 

 子どもたち、人間はとくに君たち子どもは、不完全な存在です。だから失敗をする。過ちも犯します。水谷も今まで、たくさんの失敗や過ちを犯しました。そして、今、多くの子どもたちが、自分の失敗や過ちを、だれに相談することもできず、抱え込み、苦しんでいます。

 

   君は、どうですか。子どもたち、過去は変えることができません。してしまったことは、もうどうしようもありません。だからこそ、今それを解決しておきませんか。失敗や過ちは、きちんと謝り、償わないと、君たちのこころに一生傷を残します。罪という傷を。そして君たちの明日を汚します。

 

   子どもたち、明日を過去で汚さないように。今、失敗は、謝ろう。過ちは、償おう。「ごめんなさい」の一言を言う勇気を持とう。もし、それで責められたら、とがめられたら、私に連絡をしてください。私が一緒に謝ります。私が一緒に償います。

全国を回ります

今月11月は、国の薬物乱用防止強化月間です。鳥取、新潟、福岡、熊本、東京、和歌山と、全国を、講演で回ります。

 

薬物乱用は、いまだに広く汚染が広がっています。特に、十代、二十代の若者たちの間に、大麻そして市販薬の乱用が広がっています。何とか、それを食い止めたいと考えています。そのためにも、ひとりでも多くの若者たちに、薬物の本当の姿と危険性を伝えてきます。

 

明日は、朝一の飛行機で鳥取に向かいます。中学校での講演と、国の大会での講演です。夜は、駅周辺で夜回りと情報収集です。

 

先週は、北海道旭川での講演でした。今季初めて0度を体験しました。寒暖の差になかなかからだがついていきません。

 

さて、頑張ってきます。

子どもたちへ No.8

この夏、大切な教え子が自ら命を絶ちました。私とは、十五年のつきあいでした。知り合ったとき、彼女はすでに21歳、子どもも二人いました。かわいい二人の女の子をつれて、私の学校に私を訪ねてきました。はじめて会った彼女の目には、覚せい剤乱用者特有の影がありました。

 

 彼女の話を聞いて私は、泣きました。つらかった。彼女の父親は、暴力団の組員でした。彼女の母親は、覚せい剤の乱用者、からだを売りながら彼女を育てました。優しかったそうです。しかし、彼女が中学三年の夏に警察に捕まりました。それからは、地獄でした。父親からの性的虐待、それから逃れるために家を出て、夜の世界に。そして、次から次と現れる、肉体ねらいの夜の世界の男たちに、一夜の優しさと救いを求めました。そのたびに更に哀しみは増し、17歳で、絶対母親のようにはならないと、決めていたのに覚せい剤に救いを求めました。そして、覚せい剤の売人の青年と同棲、二人の子どもを生みました。その売人の青年が、私が関わったことのある青年でした。彼が、警察に捕まり、面会に行ったとき、水谷に相談して、二人の子を自分が戻るまできちんと育ててほしいと頼まれたそうです。

 

 私と知り合ってから彼女は、子どもたちを施設に預け、そして自分は薬物依存症からの回復のために、入院し、そして専門の施設に入りました。三年後には、高校や中学校で自分の薬物乱用体験を生徒の前で話し、薬物の恐ろしさを若者たちに伝え始めました。私には、若者たちに自分の過去を語ることで、薬物の魔の手から逃れようとしているように見えました。痛ましかった。そして、五年後には、自分で薬物乱用者の回復のための施設をつくりました。

 

   私は、彼女と会うたびに「走りすぎるなよ。無理はしないこと。薬物関係の世界から去って、子どもたちと一緒に普通に生活してみないか」そう言い続けました。そのたびに彼女は、「先生無理だよ。薬物はそんなに甘いものじゃない。こうやって戦い続けないと勝てない。今だって、覚せい剤使いたくてしょうがないんだ。子どもたちは、今はいい里親さんと幸せにしてる。これでいいんだよ」寂しそうに答えました。

 この夏彼女は死にました。彼女の部屋の壁には「覚せい剤のばかやろう。お前なんかに負けるか」そう書いてありました。

 

 子どもたち、薬物は恐ろしいです。一度乱用すれば、一生追いかけてきます。こんな哀しみは、もういいです。子どもたち、薬物には絶対近づかないでください。

子どもたちへ No.7

子どもたち、人の悩みを聞いてあげたり、相談に乗ってあげることの危なさに気付いていますか。悩んでいる友だちと寄り添って生きることの危なさに気付いていますか。確かに、悩んでいる友だちの悩みを聞いてあげたり、相談に乗ってあげることは、とっても尊い、優しい行いです。でも、悩みや相談を聞くだけで、何もできなかったら・・・。自分を責めてしまったり、相手を失望させたり、あるいは友だちとの関係が悪くなる原因になりませんか。

 

 子どもたち、子どもはなぜ子どもなのか知っていますか。君たちは、私たち大人のように、働いたり税金を国に払ったりしなくてもいいですし、家の家事や食事に頭を悩ませなくてもいいです。また、犯罪を犯しても、少年として多くの場合、処罰より矯正を先にと優遇されています。

 

   これは、なぜでしょうか。君たちが、私たち大人と比べてまだ不完全な存在だからです。子どもたち、君たちの生きた年数は非常に短いです。また、いろいろな事象や人との出会いも限られています。ですから、限られた知識や経験しか持っていません。その限られた経験や知識でだれかの悩みを解決しようとしても、ほとんどの場合うまくいきません。かえって相手を傷つけてしまったり、救えなかった自分を追い込んでしまいます。

 

 私は、この何年かずっと、君たち子どもたちが悩みや相談を書き込む携帯電話やインターネットのホームページやブログを、見守り続けてきました。毎晩のように数限りない悩みや相談が書き込まれ、相手の本当の状態もわからないままに、多くの心優しい書き込みと、また少なくないこころない書き込みが書かれていきます。そしてその中で、さらに傷つき死へと向かう子どもたち、さらに病んでいく無数の子どもたちと、関わり続けてきました。中には、命を絶ってしまった子どもたちもいます。哀しいです。

 

 子どもたち、これだけは忘れないでください。君たちは、だれかを自分だけで救おうと助けようとしてはいけません。特に相手をきちんと知ることのできないネット上や携帯電話などで。だれかを本当に救いたかったら、必ず大人たちの力を借りてください。犯罪のにおいがするときは、警察の方々の。いじめや学校の問題なら先生方の。それ以外の問題なら、親やまわりの大人たちの。

 

 あともう一つだけ覚えていてください。だれかを救いたいなら、まずは君自身が幸せになることです。そして、君の幸せをきちんと回りに見せることです。幸せな人しかだれかを幸せにすることはできません。