2019.12.29
闇鍋
先日、私は、ある児童養護施設で講演をしてきました。事情があって親と一緒に暮らせない、あるいは、親からの虐待で保護された、小学校一年生から高校三年生までの、三十二人の子どもたちが、優しい職員の人たちとともに生活をしていました。そして、講演後、施設の食堂で、子どもたちと一緒に夕食を食べました。この日の夕食は、山盛りのサラダにカレーライス。そして、コーンスープ。リンゴのデザート付き。さすがに子どもたちは、カレーライスが大好きです。小さな子どもたちまで、お代わりをしておいしそうに食べていました。
食事の後、私は、子どもたちにある話をしました。私の高校時代、仲間たちと、「闇鍋」をしたという話です。みなさんは、「闇鍋」を知っていますか。便所のスリッパでも、ネズミの死骸でも、何でもいいから、一人何かとても食べることのできないものを拾ってきて、それを鍋の中で、煮込み、それから、部屋を真っ暗にします。そして、鍋の中から、何か一つすくいます。みんながすくい終わったら、部屋を明るくして、そのすくったものを、どんなことをしても食べきる。当時の度胸試しでした。子どもたちは、目を輝かせ、何人かの女の子は、顔をしかめていましたが、私に尋ねました。「先生は、何をつくったの」私が、「仲間のパンツ」というと、大声で笑われました。
そんなとき、一人の中学生の女の子が、「いいな。鍋。何か家族って感じがする。私、食べたことない。今まで。ここでも」哀しそうに、ぽつんとつぶやきました。私は、帰り際、施設長さんに、お金を預けました。これで、子どもたちに、鍋料理を食べさせてあげてください。すき焼きでも、水炊きでも、子どもたちの食べたい鍋料理を。
昨日、施設の方から電話がありました。「先生、ありがとうございました。夕べ、みんなで鍋を囲みました。しかも、闇鍋です。子どもたちの一人が、どうせなら闇鍋をやりたいって。でも、先生のとは違います。子どもたちみんなが、千円の軍資金を持って、みんなでスーパーに。自分が、食べたい材料を買いました。牛肉、豚肉、鶏肉、魚、豆腐、ジャガイモ、さつまいも、小さな子の中には、ポテトチップスやお煎餅、お餅を買った子まで。食堂のおばさんたちは、悪戦苦闘。何とか、鍋を仕上げました。それを、うちの一番大きな鍋で、子どもたちのテーブルに。子どもたち、みんなで。小さな子たちが、これで、みんな家族だねって。少し、泣きました。先生、ありがとう」
私も、少し泣きました。
