2020.01.23
商店街でこころを買う
みなさんやみなさんの家族は、食料を買い物するとき、どこに行きますか。多分ほとんどの人が、車で郊外のスーパーに、と答えるでしょう。今、日本人の多くが、スーパーマーケットで買い物をします。確かに、スーパーは、便利です。野菜、魚、肉、調味料からお菓子、飲み物、大きいスーパーなら、衣類や調理器具まで、すべての商品が一カ所で手に入ります。価格も安いですし、品質管理もきちんと行われており、安心、安全です。かごをカートに載せて、店内を一回りすれば、あっという間に、必要なものすべてが手に入ります。今や、日本中で、スーパーのない町を探すことは、難しいでしょう。
でも、その一方で、かつてはどの町にも、その中心にあった商店街が、どんどん潰れて行っています。私は、講演で全国を回りますが、どの町でも、シャッターを閉じ、人影もまばらになった商店街を目にします。確かに、商店街で買い物をすることは大変です。魚屋、八百屋、肉屋、乾物屋、一つひとつの店を回りながら、欲しいものを買わなくてはなりません。手間もかかるし、体力も使います。でも、私は、商店街が大好きです。
私が住む町逗子、葉山には、まだ元気のいい商店街が残っています。私は、休みの日は、できる限り商店街で買い物をしています。商店街での私の買い物は、まずは魚屋からです。私の住む町は、相模湾に面していて、おいしいさかながたくさん取れます。私が店先に立てば、すぐに元気な声が飛んできます。「先生、今日は休みかい。いいすずきがあがってるよ。刺身でもムニエルでも何でもおいしい。少し持っていきな。それに、このめとういかも。ゆでて、酢味噌で食べてみな」次には、八百屋に。八百屋のおばあちゃんが、私に話しかけてきます。「この三浦大根は最高だよ。朝取りだ。持っていきな。いいかい、皮を厚めにむいて煮るんだよ。ただし、皮は捨ててはだめ。もったいない。そのまま千切りにして、醤油とみりんに漬け込めば、おいしいよ」金物屋の前を通れば、奥にいたご主人から呼び止められます。「先生、こないだ買ってもらった包丁、まだちゃんと切れてるかい。包丁は、ちゃんと研いで、切れるようにしとかないとだめだよ。切れない包丁じゃ、刺身も野菜もまずくなる。いつでも研いでやるから持ってきな」わずか百メートルの商店街を一周するのに、一時間以上はかかります。でも、帰りには、その季節の旬のおいしい食材がたくさん手に入ります。料理の知識とともに。
スーパーは、ものを売ります。良い商店街は、こころを売っています。商店街の人たちは、一人ひとりがその商売の専門家として、いつもお客さんのことを考えながら、商品を仕入れ、売っています。みなさん、こころを買いに商店街に行ってみよう。
