2021.02.17
読書三昧 13
「ぐれる!」 新潮文庫
中島義道、すごい人である。多分、ほとんどの人が、そうは思っていても、それを言ってしまったらどうなるかが、恐ろしくて、口にできないことを、何のためらいもなく語り、それどころか、一冊の本にまとめ、出版してしまう。困った人である。
中島義道の「ぐれる!」(新潮新書)を読んで、青春時代以来、久しぶりに元気をもらった。そう、高校時代に、「般若心経」を読んで感じた、あの何ともいえないすっきりとした感覚がよみがえった。
彼は、いう。人はどうせ死ぬ存在だし、この世界もいずれ滅びる。そして、人は、不平等に生まれついているし、社会も不平等なものである。また、人は、偶然に左右される。言い換えれば、この世は、理不尽なもの、それをまじめに生きてもしょうがない。その理不尽さに気づかない人は、分相応にだまされて生きれば良い。でも、その理不尽さに気づいてしまった人は、居直ってぐれよう。
彼の語ることは真実である。遙か昔、仏陀も同じ事を語った。人生というものは、苦でしかない。人は、生まれ、老い、病み、死んでいく。また、人生には、何の必然性もない。空しいものだと。
でも、彼と仏陀は、最後の答えが、根本的に異なる。仏陀は、決してぐれろとは言わない。そんな悲しい宿命を持った人だからこそ、限られた人生を、欲望を捨てて、慈悲の心を持って生きろと説く。
実は、私も青春時代、この世界の不条理に気づき、ぐれたことがある。この世のすべてに失望し、今をどう楽しむかだけに生きたことがある。でも、続けることはできなかった。なぜなら、私の周りには、たくさんの優しさや愛があったから。
今度一度、中島義道と会いたい。そして、聞きたい。本当に彼がぐれ続けているのか。もし、彼が、イエスと答えたなら、彼は、日本で最も悲しい人である。
