2020.06.30
人を殺すことは悪なのか
今回まで、このところ私が読み直しした。青春時代に私の人生に大きな影響を与えた本について書きます。今回は、ロシアのロープシンが書いた「蒼ざめた馬」です。
もう相当前になります。人を殺すことが悪なのか、この問が、大きな社会的な問題になったことがあります。
みなさんは、どう答えることができますか。みなさんのまわりの人たちは、どう答えると思いますか。
まず間違いなく、みなさんの多くも、ほとんどの人も、悪だと答えると思います。でも、本当にそうなんでしょうか。この問には、確実に一つの間違いがあります。殺されるのは、だれかわからない人ではなく、その人なりの人格や人生、家族を持ち、名前を持っただれかです。本当は、その名前で、その人を殺すことは悪なのか、と問われるべきです。
私たちの国、日本には、死刑制度があります。強盗殺人などの重い罪を犯した人たちの一部は、死刑というかたちで、殺されます。人を殺すことが悪ならば、死刑の判決を求める検察官、その判決をくだす、裁判官や裁判員、そしてそれを執行させられる刑務官の人たちは、悪を為していることになります。また、今も、世界各地でおきている戦争や地域紛争で、敵の兵士を殺している兵士も、悪を為していることになります。
みなさん、聞きたいことがあります。今も、世界の少なくない国で実際におきていますが、その国を支配する独裁者が、多くの子どもたちや国民を、自分の地位や富を守るために殺しているとします。その独裁者を殺すことは、悪でしょうか。その独裁者が殺されることで、多くの子どもたちや国民が救われます。
私は、中学生のころから、この問に悩み続けてきました。その私に、一つの答えを示唆してくれたのが、この本「蒼ざめた馬」でした。この本は、ロープシン、本名は、ポリス・サヴィンコフという帝政ロシア末期の、実在した一人の革命家、テロリストが書いた本です。
みなさんは、テロリストとはどのような人たちか知っていますか。まさに今、このテロの恐怖が、世界中を覆っています。破壊や殺人を通して、社会体制を変えたり、権力者を倒そうとすること、これがテロです。
この本には、何人かのテロリストが登場します。彼らは、帝政ロシア時代に、皇帝や貴族たちの圧政に苦しむ、貧しい労働者や農民を救うために、爆弾や拳銃によって彼らを暗殺し、政府や体制を壊そうとします。
でも、彼らも血の通った人間です。相手を殺すことがはたして人間として、許されることなのか。苦しみぬきます。殺そうとした貴族の馬車に、子どもが乗っていたため、爆弾を投げることのできなかったテロリストもいます。人を殺すことは許されないと言い続けていたのに、友人にそれをさせないため、爆弾を投げたテロリストもいます。自分もその爆弾で命を失うことによって、その罪を償おうとしながら。
残念ながら、この本には、だれかを殺すことが悪なのか、その答えはありません。でも、この本を読む一人ひとりが、自己の責任で、その答えを得るための、ヒントはあります。
