2020.05.03
自然に触れよう
私が、いつも講演会で会場に来てくれた人たちに、最初に聞くことがあります。それは、「今日、朝起きてから今まで、一つでも、美しい花を見た人、一回でも、美しい鳥の声を聞いた人、手を上げてください」という質問です。哀しいことに、いつも多くの大人たちや、子どもたちの手が上がりません。美しい花や美しい鳥の声、美しい自然と触れあうことは、人のこころを優しくしてくれます。でも、今、多くの人が、その時間を作るゆとりをなくしています。みなさんは、どうですか。
私のもとには、多くの今に苦しみ悩む若者たちからの「つらい」、「苦しい」、「死にたい」というメールや電話が届きます。私は、そのような相談をしてくる若者たちに、いつも一つのお願いをします。それは、一日に一つでも二つでもいいから、美しい花や美しい朝日、夕日、あるいは景色を見つけて、それを携帯電話で写真に撮って、私のもとに送って欲しいというお願いです。私のもとには、毎日数え切れないぐらいの美しい写真が届きます。そして、若者たちは、美しいものに触れるにつれて、変わっていきます。ある若者は、私に海辺の美しい景色の写真を送ってくれました。その写真には、「先生、死にたい、死にたいと想っていた自分が、とっても恥ずかしくなった。今がどんなに苦しくても、生きてさえいれば、きっとたくさんいいことがある。そう思えてきた。だって生きていたから、こんな美しい景色を見ることができたんだから。」といううれしいことばが記してありました。いじめで苦しみ、死を考えていた少女は、自分の飼っているかわいい猫の写真を送ってくれました。その写真には、「私が死んでしまったら、この子が一人ぼっちになってしまう。そんなことできない。先生、力を貸してください。いじめと戦います」ということばが添えてありました。また、親からの虐待に苦しみ、自らいのちを絶とうと、マンションの屋上に立った少年は、「先生、飛び降りようとしたときに、先生のことばを思いだして、遠くを見た。そしたら、大きな夕日が沈もうとしてた。すごくきれいだった。自分が、とても小さな人間に思えた。生きてみようと思った」というメールを送ってくれました。今も生きています。私とともに両親から離れて、自立を目指しています。
今、私たちの社会はとてもぎすぎすしています。そして、みんながゆとりを失っています。確かに日本の経済状況は、よくありません。まじめに一生懸命働いても、それが必ず報いられるわけではありません。だからといって、こころまでゆとりを失ってしまっていいのでしょうか。
みなさんにお願いです。家から一歩出たら、少し遠回りをして、美しいものを探してみませんか。耳を澄まして、美しい鳥の声を聞いてみませんか。自然は、いつもたくさんの美しいものを、私たちの周りに置いてくれています。ちょっとこころをそちらに向けてみればいいだけです。特につらいとき、哀しいとき、美しいものの側に行って、一時を美しいものとともに過ごしてみませんか。自然は、美しいものは、私たちのこころを癒やしてくれます。それが今を、そして明日を生きる私たちの力となります。
