2025.06.06
新しい本を出版します
6月16日に新しい本「新編 夜回り先生」を出版します。
その出版までの経過を書いた、この本の「終わりに」の文章をここにのせます。
こころをこめて書き上げた本です。
多くの人たちの、子供たちのこころに届くことを祈っています。
私は、すでに六十八歳、もうすぐもう一つ年を取ります。私が、夜の町を歩き始めたのは、三十四歳の時ですから、人生の半分以上を夜の町で子供たちとともに生きてきたことになります。長い道のりでした。数多くの夜の世界な沈む子供たちを昼の世界へと連れ戻してきました。
また、今から二十五年前に、暗い夜の部屋で明日を見失い、生きることに苦しさを感じ、自らを傷つけ、市販薬や処方薬を過剰摂取し、死へと向かう子供たちの存在に気づきました。夜の町を彷徨う子供たちには、毎日「夜回り」を続けていけば、いつか出会える可能性があります。しかし、暗い部屋で、悩み苦しむ子供たちとは、それでは出会うことができません。
そんな子供たちに向けて、「夜回り先生という一人の大人が、君たちの存在に気づいたよ。一人で悩み苦しむのではなく、一緒に明日に向かって生きてみないかい」、そんな必死の想いで書き、2004年2月10日に出版した本が、ベストセラーとなった「夜回り先生」でした。日本だけではなく、韓国、台湾、フランス、インドネシアで、多くの子供たち、また大人たちに読まれました。日本では、最も本を読まない子供たちが、最も多く読んだ本の一冊といわれています。
また、この本の出版と同時に、「水谷青少年問題研究所」を設立し、そのメールアドレスと電話番号を多くのメディアで公開しました。以来、電話は数えきれず、メールは記録が残ります。総数は、すでに百三十万、関わった子供たちの数は、五十三万人になろうとしています。ほとんどの子供たちが、この「夜回り先生」という本で、私の存在を知り、相談してきた子供たちでした。
一つの命も失わないはずの戦いでした。でも、だめでした。すでに四百近くの尊い命を失いました。どの命も、失ってはいけない命、一つの命を失うたびに、私は、自分を責めました。後悔の連続、何度この戦いを止めようと思ったかわかりません。
それでも、戦い続けてきたのは、関わった子供たちのほとんどが、明日を見いだし、笑顔を取り戻してくれたからです。彼らからの「ありがとう」の一言が、私の戦いの原動力でした。
その「夜回り先生」の本が、三年前、紙の本としての出版が終わってしまいました。すでに、ネットでした読むことができない状況になっています。そのような中、ある少年院に勤める若い法務教官から、連絡がありました。私の本「夜回り先生」は、全国の鑑別所や少年院、少年刑務所に常備され、ほとんどすべての入所した少年たちが読んでいること。この本を読むことで、多くの少年たちが涙を流し、それまでの人生を顧みて、新しい人生を生き直そうとする一助となってきたことを知りました。また、少年施設では、ネットは使用できず、本も数多くの子供たちが読むことで傷んでしまっていることを知りました。彼は、何とかして、「夜回り先生」の本の再出版をして欲しいと私に頼みました。
私は、施設の子供たち、また、今も暗い夜の町を彷徨う子供たち、夜の暗い部屋で、明日を見失い、自らを傷つけ、死へと向かう子供たちのために、この本を、再出版することを決意しました。版権を最後の出版社から戻してもらい、また新しい版元を探し、そしてこうして再出版することとなりました。
再出版に当たって、私には、悩んでいたことがあります。原本のままで再出版するのか、再度書き下ろすのか、あるいは、原本の一部を残しながら加筆、再編集するのかです。そして、関係者との幾度とない話し合いの上、三つ目の道を選びました。ここまでに三年近い月日を費やしてしまいました。そして、この本「新編 夜回り先生」が完成しました。原本に書いたエピソードを中心にして、私の子供時代、青春時代のことを加筆しました。これには理由があります。私の元には、多くの子供たちから、「先生は、どんな子供時代や青春時代を過ごしたの」と聞かれてきました。そんな子供たちに、実は、私も君たちと同じ、悩み苦しみ生きてきたのだということを知ってほしかったからです。
この本は、私にとって、今まで何冊も書き続けてきた「夜回り先生」シリーズ、最後の一冊となります。私は、この本で、関わった子供たちについて書くことを止めます。
私は、ガンです。2007年に最初の手術をしてからすでに七回の手術を繰り返してきました。昨年の検査では、今のところ次の転移は発見されていません。また、老いました。そろそろ、死の足音が聞こえてきています。
これからも、命のある限り「夜回り」と子供たちからの相談に答えていくことは続けていきます。私は、戦後日本の教育界で最も子供を殺した教員です。その償いは、絶対にできません。失った命は、二度と戻らないのですから。でも、最後の日まで、夜の世界で、夜の世界の子供たちを昼の世界に戻すために生きていきます。
これが、「夜回り先生」水谷修に唯一許された生き方です。
この本が、多くの子供たちの心に届きますように。
